「Valkyrie age」第3話
2018/02/24 Sat 22:14
「何やってるんだ。慎重に行けと言っただろうが。分かってるのか、この試合に負けたらお前も俺も軍にいられなくなるんだぞ」
ダウンから立ち上がりすぐに鳴ったゴングに救われてかろうじて赤コーナーに生還出来たユウにエルマが鬼のような形相で檄を飛ばす。
「奴はカウンターの使い手だ。右は出すな。タイミングを読まれている可能性がある。左だ。左のパンチで崩していけ」
左のパンチだけで崩せるボクシングをキララがしているとは思えないよ。心の中でそう思いながらもユウは第2Rが始まるとエルマの指示通りのボクシングを実行した。それは1Rと同じ攻め方をしてもキララには勝てない。だからといって他に有効な作戦が思い浮かばないという消極的な理由からだった。
基本に忠実なボクシングにすがる他ない。
そんな追い詰められた状況の中で、赤コーナーを出ていく。
徐々にキララとの距離を詰めていきながら、軽く左拳を握る。
左拳にこんなに意識を集中させるなんていつ以来だろう。
ボクシングを始めたばかりの頃を思い出す。
ユウは自虐気味に笑みを浮かべる。
まぁ、案外悪くないかもね。
ボクシングの原点であって最も重要なパンチにすべてを託す。
分かりやすくていいじゃん。
最も練習してきたパンチなんだ。
自信を持って打ちなよ、あたし。
初めは当たらないかもしれない。でも、しつこく出し続けていればいつか当たる。
そう信じてユウは左のジャブを放った。
何千、何万と練習で打ってきたパンチ。
その中でも会心の左ジャブを打てている。
初心に帰ったユウは左の腕を前に伸ばしていく最中、パンチが走っている感触を味わう。
キララは距離を取らずにいる。
反応出来ていないんだ。
バシイィッ!!
高らかに響くジャブの音。打ち抜かれた顔面はひしゃげ、潰れた鼻から血が吹き散っていく。足がもつれよたよたと下がる。
鼻血を出させ射程の距離から追い出した、最高といえる左ジャブ。
そのパンチを生み出していたのはキララだった。
二歩三歩と後ろに下がって、持ちこたえるユウ。
「嘘でしょ…」
鼻血をキャンバスにぽたぽたと落としながら呆然とした表情で声を漏らした。
会心の左ジャブさえもカウンターのパンチを合わされた。
しかも、このR初めて打ったパンチに。
パンチを出せばカウンターで返される。
そんな地獄のような展開を想像し、ユウはごくりと唾を飲んだ。
青ざめた表情をするユウにキララが表情を変えずに言った。
「ごめんねユウちゃん。わたしはもう昔のわたしじゃないの」
ユウが歯をぐっと噛み締めた。左拳をぎゅっと握りしめる。
「何をっ…」
キララを睨み付け闘争心を剥き出しにするユウ。
「あたしだってあの時より遥かに強くなってるんだ!!」
ユウが左のジャブを放つ。しかし、そのパンチはキララの頬の横を通り過ぎ、逆にキララの左ジャブがユウの頬に抉り込むように打ち込まれた。
首がぐにゃりと曲がるユウ。唾液と血が霧状に舞い、キャンバスにシミが出来上がる。
歯を食いしばって堪え、再び睨み付けるようにキララを見た。
認めたくない。キララのその力を。
全てのパンチを返すカウンターパンチを打てる。
そんな技術を持っていたら勝てるはずない。
ただ可能性を否定したいがためにユウはすぐさま反撃に出た。
審判のカギを握る左ジャブを打って。
しかし、そのパンチをヘッドスリップで難なくかわしたキララは左ジャブをカウンターでユウの顔面にめり込ませる。
第2Rが開始され、またユウへの声援が起き始めていた場内が瞬く間に静まり返った。
あらゆるパンチをカウンターで打ち返す怪物の誕生を目にし、地球側の人間が大半を占める観客たちは言葉を失う。
ありえないという思いは勝てるはずがないへと変わっていた。
ユウが左ジャブを打ちに出る。
ユウだけが受け入れられずにいる。
その先にあるのは――――。
「またしてもキララ・チガサキのカウンターパンチが炸裂!!これで五発連続です。ユウ・アカシの左ジャブをすべてカウンターで打ち返しています!!キララ・チガサキが地球最強のファイター、ユウ・アカシを手玉に取っています!!」
出したパンチをことごとくカウンターで返され、パンチを打つたびにボロボロになっていくユウ。
想定した地獄が現実のものとなっていく。
ダウンから立ち上がりすぐに鳴ったゴングに救われてかろうじて赤コーナーに生還出来たユウにエルマが鬼のような形相で檄を飛ばす。
「奴はカウンターの使い手だ。右は出すな。タイミングを読まれている可能性がある。左だ。左のパンチで崩していけ」
左のパンチだけで崩せるボクシングをキララがしているとは思えないよ。心の中でそう思いながらもユウは第2Rが始まるとエルマの指示通りのボクシングを実行した。それは1Rと同じ攻め方をしてもキララには勝てない。だからといって他に有効な作戦が思い浮かばないという消極的な理由からだった。
基本に忠実なボクシングにすがる他ない。
そんな追い詰められた状況の中で、赤コーナーを出ていく。
徐々にキララとの距離を詰めていきながら、軽く左拳を握る。
左拳にこんなに意識を集中させるなんていつ以来だろう。
ボクシングを始めたばかりの頃を思い出す。
ユウは自虐気味に笑みを浮かべる。
まぁ、案外悪くないかもね。
ボクシングの原点であって最も重要なパンチにすべてを託す。
分かりやすくていいじゃん。
最も練習してきたパンチなんだ。
自信を持って打ちなよ、あたし。
初めは当たらないかもしれない。でも、しつこく出し続けていればいつか当たる。
そう信じてユウは左のジャブを放った。
何千、何万と練習で打ってきたパンチ。
その中でも会心の左ジャブを打てている。
初心に帰ったユウは左の腕を前に伸ばしていく最中、パンチが走っている感触を味わう。
キララは距離を取らずにいる。
反応出来ていないんだ。
バシイィッ!!
高らかに響くジャブの音。打ち抜かれた顔面はひしゃげ、潰れた鼻から血が吹き散っていく。足がもつれよたよたと下がる。
鼻血を出させ射程の距離から追い出した、最高といえる左ジャブ。
そのパンチを生み出していたのはキララだった。
二歩三歩と後ろに下がって、持ちこたえるユウ。
「嘘でしょ…」
鼻血をキャンバスにぽたぽたと落としながら呆然とした表情で声を漏らした。
会心の左ジャブさえもカウンターのパンチを合わされた。
しかも、このR初めて打ったパンチに。
パンチを出せばカウンターで返される。
そんな地獄のような展開を想像し、ユウはごくりと唾を飲んだ。
青ざめた表情をするユウにキララが表情を変えずに言った。
「ごめんねユウちゃん。わたしはもう昔のわたしじゃないの」
ユウが歯をぐっと噛み締めた。左拳をぎゅっと握りしめる。
「何をっ…」
キララを睨み付け闘争心を剥き出しにするユウ。
「あたしだってあの時より遥かに強くなってるんだ!!」
ユウが左のジャブを放つ。しかし、そのパンチはキララの頬の横を通り過ぎ、逆にキララの左ジャブがユウの頬に抉り込むように打ち込まれた。
首がぐにゃりと曲がるユウ。唾液と血が霧状に舞い、キャンバスにシミが出来上がる。
歯を食いしばって堪え、再び睨み付けるようにキララを見た。
認めたくない。キララのその力を。
全てのパンチを返すカウンターパンチを打てる。
そんな技術を持っていたら勝てるはずない。
ただ可能性を否定したいがためにユウはすぐさま反撃に出た。
審判のカギを握る左ジャブを打って。
しかし、そのパンチをヘッドスリップで難なくかわしたキララは左ジャブをカウンターでユウの顔面にめり込ませる。
第2Rが開始され、またユウへの声援が起き始めていた場内が瞬く間に静まり返った。
あらゆるパンチをカウンターで打ち返す怪物の誕生を目にし、地球側の人間が大半を占める観客たちは言葉を失う。
ありえないという思いは勝てるはずがないへと変わっていた。
ユウが左ジャブを打ちに出る。
ユウだけが受け入れられずにいる。
その先にあるのは――――。
「またしてもキララ・チガサキのカウンターパンチが炸裂!!これで五発連続です。ユウ・アカシの左ジャブをすべてカウンターで打ち返しています!!キララ・チガサキが地球最強のファイター、ユウ・アカシを手玉に取っています!!」
出したパンチをことごとくカウンターで返され、パンチを打つたびにボロボロになっていくユウ。
想定した地獄が現実のものとなっていく。
小説の更新
2018/02/19 Mon 19:43
こんばんば~、へいぞです。
昨日に「ヴァルキリーエイジ」第二話を掲載しました。ちょっと説明が足りてないかと思って今日少し文章を加筆しています。
このマンガがすごいで一位になった約束のネバーランドが気になって立ち読みしてみました。評判通りの面白さで購入しようか悩んでいるところです。
昨日に「ヴァルキリーエイジ」第二話を掲載しました。ちょっと説明が足りてないかと思って今日少し文章を加筆しています。
このマンガがすごいで一位になった約束のネバーランドが気になって立ち読みしてみました。評判通りの面白さで購入しようか悩んでいるところです。
「Valkyrie age」第2話
2018/02/18 Sun 22:05
「スペースコロニーに移住?」
「うん」と申し訳なさそうに答えるキララ。
「何でスペースコロニーなのっ…あっちの生活水準は地球より低いって有名じゃん」
そう言うと、キララは表情を曇らせて俯いてしまった。
あたしは思い出した。キララの家庭がけっして恵まれていないことを。キララの父親は地球歴史学の学者だけれど、数年前に大学の教授の座を追われて、それからは研究を続けながら小さな塾の講師のアルバイトでなんとか生計を立てていた。だから、キララはジムの月会費を一番安いコースにしている。一番安いコースは練習の場を自由に使えるだけでトレーナーの指導がつかない。でも、キララの強くなりたい思いを知ったあたしはトレーナーから教わったことを自分が彼女に教えていた。あたしが教えているからというのもあるけれど、彼女はけっしてボクシングは強くなかった。それでも、彼女は毎日のようにジムに通い真面目に練習を続けた。強い女性に憧れていた彼女はボクシングで世界チャンピオンになることを夢見ていた。
「ごめん…」
「そうじゃないのユウちゃん」
キララが慌てて否定する。
「えっ?」
「第3スペースコロニーの政府がお父さんの仕事を認めてくれて援助してくれるんだって。お父さんすごく喜んで…」
そう言って彼女は続けた。
「わたしは今の生活すごく好きだけど、だからいいの。お父さんがあんなに喜んだ顔見たの初めてだから」
「そっか…じゃあ笑顔でキララを送り出さないとね」
あたしは精一杯の笑顔を彼女にみせた。キララもぎこちない笑顔をみせてくれた。
「あっちでもボクシング続けるんでしょ」
「うん」
「目指すはあっちで世界チャンピオンだね」
「うん」
キララは頷いて、そして片方の目から涙が零れ落ちていった。
「ユウちゃんもお父さんの情報分かるといいね」
キララにはボクシングを始めた理由を教えていた。父のことまで話をしたのはジムの中で彼女だけだった。彼女だけがあたしの特別な存在で彼女にだけは本心を話したんだ。
そのキララとリングの中央で対峙している。収容人数8万人を誇るサッカースタジアムであるマリンフィールドスタジアムが満員となるほどの観客が集まる中で。
プロボクシングのリングなら受け入れられた。でも、このリングは地球とコスモスの大統領を始めとした両サイドの要人が観覧する御前試合であり、でもそれは建前で実質は地球とコスモスの威信をかけたボクシングの試合なのだ。政府の黒い思惑が入り混じったそんな汚い舞台でキララと闘うなんて耐えられない。
地球の方がコスモスより遥かに優れていることをホームである地球だけじゃなくスペースコロニーでも放送される大舞台の場で知らしめる。戦争で勝利した地球の方が今もコスモスよりも強い。そんなくだらない名目のためにキララを大観衆の前で倒さなきゃいけないなんて。
あたしに出来ることは早くキララを倒して試合を早く終わらせるだけだ。
キララと目を合わせることなく、赤コーナーに戻ると、
「言うまでもないがコスモスのボクシングのレベルは地球より低い。だからといって油断はするな。負けるわけにはいかない試合なんだ。1Rは様子を見ていけ。確実に勝つためにな」
エルマにそう指示を出されて頷いたけれど、でも試合開始のゴングが鳴ると、身体が前へ前へといくのが止まらなかった。
左のジャブから右のストレートのコンビネーションを積極的に打った。
早く試合を終らせたいその一心がユウを攻めに走らす。
右のストレートでどんな強敵もリングに沈めてきた。目で捉えられないほどのスピードでステルスと呼ばれている自慢の右ストレート。
キララには申し訳ないけれど、必殺のパンチで早く試合を終わらせる。
そう思い、何度も右のストレートを放った。
でも、目にしたのは想像すらしてなかった光景。
パンチが一発も当たらない。ガードどころかかすりすらしない。パンチを打つたびにキララは距離を取り、ユウのパンチの間合いから消えていった。右のパンチだけじゃなくて左のジャブさえもパンチを打つと後ろに下がり、距離が離れていく。それはまるでユウの思いを見透かしているかのようだった。
キララはファイティングポーズを取り、表情をまったく変えずに立っている。一方のユウはパンチの空振りが続き息を乱している。
その姿は赤コーナーと青コーナーの二人の立ち位置がまったく逆であるかのようであった。
これがあのキララなの?
ユウは息を切らしながら信じられない思いで目の前に立つかつての親友の姿を見る。
キララは以前のキララと違う。これまで闘ってきた地球のファイターたちよりも強くなっている。
でも、これならどう。
ユウは攻め手を変えた。横、斜めの動きを捨ててひたすら前進しながらパンチを打ち続ける。かわしながら後ろに下がっていくキララを待ち受けていたのはコーナーポスト。逃げる場所を失ったキララにユウが右のフックを放つ。
捉えた。
そう思ったパンチは何も捉えずに空転した。
対戦相手を見失ったユウはすぐに後ろを振り向く。
キララはコーナーポストから脱出していた。コーナーポストを背負ったのは自分。やばいと思ったユウは慌ててガードを上げる。
しかし、キララは攻めるどころか後ろへと下がっていく。そうしてリング中央で足を止めたキララに対して、ユウは向かって行った。
我を忘れていた。キララを出来るだけ傷つけずに勝つことを。コーナーポストに追い詰めた相手を目の前にして下がる行為。見下されたかのようなふるまいに闘争本能が反応した。
目の前の敵を倒さなきゃ。
その思いに満ち溢れていたユウの右のストレート。
グワシャァッ!!
爆弾が爆発したかのような凄まじい音がリングに響き渡った。
ついに当たったパンチはまるでとどめの一撃のように強烈な光景を生んだ。
血飛沫が舞い散り、マウスピースが宙へと飛んでいく。
激しいパンチの衝撃に瞳の輝きを失い、ぐにゃりと足が曲がるように後ろに崩れ落ちていく。
歓声に溢れていた場内が静まり返る。声を出せずに今にも悲鳴を上げたい表情でリングに目を向ける大勢の観客たち。
異様な空気に包まれた中、ユウは「速い…」とうめくように声を漏らし、身体を震わせた。
――――あたしのステルスよりも…
大の字になってマットに沈んでいるユウ。ファイティングポーズを崩さずに見下ろすキララの姿をぼんやりとした視界の中に映しながら、パンチのダメージに身悶える。
負けるはずがないと思っていたかつてのジムメートに1R早々に倒された…
得意の右のストレートの打ち合いで上をいかれた…
屈辱的な思いがいくつも錯綜するように頭の中でぐるぐると動き回る。
ダウンを告げるレフェリーの声を合図に静まり返っていた場内が一転してざわめいた。
第1Rですでにグロッギ―な姿をみせるユウに地球の住人が大半を占める観客たちは悲鳴を上げ、アナウンサーが叫んだ。
「ダウン!!第1R早々にダウンシーンが起こりました。ダウンしたのはユウ・アカシ。地球のファイターがダウンしたのはこれが初めてです!!」
「うん」と申し訳なさそうに答えるキララ。
「何でスペースコロニーなのっ…あっちの生活水準は地球より低いって有名じゃん」
そう言うと、キララは表情を曇らせて俯いてしまった。
あたしは思い出した。キララの家庭がけっして恵まれていないことを。キララの父親は地球歴史学の学者だけれど、数年前に大学の教授の座を追われて、それからは研究を続けながら小さな塾の講師のアルバイトでなんとか生計を立てていた。だから、キララはジムの月会費を一番安いコースにしている。一番安いコースは練習の場を自由に使えるだけでトレーナーの指導がつかない。でも、キララの強くなりたい思いを知ったあたしはトレーナーから教わったことを自分が彼女に教えていた。あたしが教えているからというのもあるけれど、彼女はけっしてボクシングは強くなかった。それでも、彼女は毎日のようにジムに通い真面目に練習を続けた。強い女性に憧れていた彼女はボクシングで世界チャンピオンになることを夢見ていた。
「ごめん…」
「そうじゃないのユウちゃん」
キララが慌てて否定する。
「えっ?」
「第3スペースコロニーの政府がお父さんの仕事を認めてくれて援助してくれるんだって。お父さんすごく喜んで…」
そう言って彼女は続けた。
「わたしは今の生活すごく好きだけど、だからいいの。お父さんがあんなに喜んだ顔見たの初めてだから」
「そっか…じゃあ笑顔でキララを送り出さないとね」
あたしは精一杯の笑顔を彼女にみせた。キララもぎこちない笑顔をみせてくれた。
「あっちでもボクシング続けるんでしょ」
「うん」
「目指すはあっちで世界チャンピオンだね」
「うん」
キララは頷いて、そして片方の目から涙が零れ落ちていった。
「ユウちゃんもお父さんの情報分かるといいね」
キララにはボクシングを始めた理由を教えていた。父のことまで話をしたのはジムの中で彼女だけだった。彼女だけがあたしの特別な存在で彼女にだけは本心を話したんだ。
そのキララとリングの中央で対峙している。収容人数8万人を誇るサッカースタジアムであるマリンフィールドスタジアムが満員となるほどの観客が集まる中で。
プロボクシングのリングなら受け入れられた。でも、このリングは地球とコスモスの大統領を始めとした両サイドの要人が観覧する御前試合であり、でもそれは建前で実質は地球とコスモスの威信をかけたボクシングの試合なのだ。政府の黒い思惑が入り混じったそんな汚い舞台でキララと闘うなんて耐えられない。
地球の方がコスモスより遥かに優れていることをホームである地球だけじゃなくスペースコロニーでも放送される大舞台の場で知らしめる。戦争で勝利した地球の方が今もコスモスよりも強い。そんなくだらない名目のためにキララを大観衆の前で倒さなきゃいけないなんて。
あたしに出来ることは早くキララを倒して試合を早く終わらせるだけだ。
キララと目を合わせることなく、赤コーナーに戻ると、
「言うまでもないがコスモスのボクシングのレベルは地球より低い。だからといって油断はするな。負けるわけにはいかない試合なんだ。1Rは様子を見ていけ。確実に勝つためにな」
エルマにそう指示を出されて頷いたけれど、でも試合開始のゴングが鳴ると、身体が前へ前へといくのが止まらなかった。
左のジャブから右のストレートのコンビネーションを積極的に打った。
早く試合を終らせたいその一心がユウを攻めに走らす。
右のストレートでどんな強敵もリングに沈めてきた。目で捉えられないほどのスピードでステルスと呼ばれている自慢の右ストレート。
キララには申し訳ないけれど、必殺のパンチで早く試合を終わらせる。
そう思い、何度も右のストレートを放った。
でも、目にしたのは想像すらしてなかった光景。
パンチが一発も当たらない。ガードどころかかすりすらしない。パンチを打つたびにキララは距離を取り、ユウのパンチの間合いから消えていった。右のパンチだけじゃなくて左のジャブさえもパンチを打つと後ろに下がり、距離が離れていく。それはまるでユウの思いを見透かしているかのようだった。
キララはファイティングポーズを取り、表情をまったく変えずに立っている。一方のユウはパンチの空振りが続き息を乱している。
その姿は赤コーナーと青コーナーの二人の立ち位置がまったく逆であるかのようであった。
これがあのキララなの?
ユウは息を切らしながら信じられない思いで目の前に立つかつての親友の姿を見る。
キララは以前のキララと違う。これまで闘ってきた地球のファイターたちよりも強くなっている。
でも、これならどう。
ユウは攻め手を変えた。横、斜めの動きを捨ててひたすら前進しながらパンチを打ち続ける。かわしながら後ろに下がっていくキララを待ち受けていたのはコーナーポスト。逃げる場所を失ったキララにユウが右のフックを放つ。
捉えた。
そう思ったパンチは何も捉えずに空転した。
対戦相手を見失ったユウはすぐに後ろを振り向く。
キララはコーナーポストから脱出していた。コーナーポストを背負ったのは自分。やばいと思ったユウは慌ててガードを上げる。
しかし、キララは攻めるどころか後ろへと下がっていく。そうしてリング中央で足を止めたキララに対して、ユウは向かって行った。
我を忘れていた。キララを出来るだけ傷つけずに勝つことを。コーナーポストに追い詰めた相手を目の前にして下がる行為。見下されたかのようなふるまいに闘争本能が反応した。
目の前の敵を倒さなきゃ。
その思いに満ち溢れていたユウの右のストレート。
グワシャァッ!!
爆弾が爆発したかのような凄まじい音がリングに響き渡った。
ついに当たったパンチはまるでとどめの一撃のように強烈な光景を生んだ。
血飛沫が舞い散り、マウスピースが宙へと飛んでいく。
激しいパンチの衝撃に瞳の輝きを失い、ぐにゃりと足が曲がるように後ろに崩れ落ちていく。
歓声に溢れていた場内が静まり返る。声を出せずに今にも悲鳴を上げたい表情でリングに目を向ける大勢の観客たち。
異様な空気に包まれた中、ユウは「速い…」とうめくように声を漏らし、身体を震わせた。
――――あたしのステルスよりも…
大の字になってマットに沈んでいるユウ。ファイティングポーズを崩さずに見下ろすキララの姿をぼんやりとした視界の中に映しながら、パンチのダメージに身悶える。
負けるはずがないと思っていたかつてのジムメートに1R早々に倒された…
得意の右のストレートの打ち合いで上をいかれた…
屈辱的な思いがいくつも錯綜するように頭の中でぐるぐると動き回る。
ダウンを告げるレフェリーの声を合図に静まり返っていた場内が一転してざわめいた。
第1Rですでにグロッギ―な姿をみせるユウに地球の住人が大半を占める観客たちは悲鳴を上げ、アナウンサーが叫んだ。
「ダウン!!第1R早々にダウンシーンが起こりました。ダウンしたのはユウ・アカシ。地球のファイターがダウンしたのはこれが初めてです!!」
各作品の進捗状況
2018/02/17 Sat 15:23
こんにちは~、へいぞです。
ブログを再開して以降、書いた小説の中でいくつかの作品は途中で止まっているので各作品の進捗状況を書いておこうと思います。
・その花は強くて優しかった 次の試合の途中まで大まかに書いてはいるんですけど、試合のシーンに納得がいかなくて答えを出せるまで寝かしている状況です。ただ物語のプロットは最後までおおまかに考えてあるし、人気シリーズの完結編なので優先して書きたいと思っている作品です。
・ときめき10カウント~あの時の約束 物語のクライマックスに突入したところで止めてしまったので早く最後まで書き上げたいと思っている作品です。少女漫画的世界観の物語を書きたいモードになった時にまた書けるのではないかと思います。これまではそうして書いてました。
・Love & fight 物語のプロットは大まかに出来てるのですけど、「ときめき10カウント~あの時の約束」と似ている作品なので、「ときめき10カウント~あの時の約束」の方を優先して書きたいと考えてます。ただみさおというキャラは動かしやすいのでこちらの作品を先に書くかもしれません。
・おさぼく2 この作品も物語のプロットは最後まで出来てるし、試合シーンのアイデアも出てるのですけど、物語にもう一味が足りてない感じがするので寝かしてます。遥花のイラストを描いてキャラのイメージをより「掴みやすくなれば筆が進むかなとも思ってます。
・君がリングに上がる 物語の方向性がいまいち定まらないので止めています。おさぼく2の元になった作品でもあるので先におさぼく2の方を書き上げてからになると思います。
ブログを再開して以降、書いた小説の中でいくつかの作品は途中で止まっているので各作品の進捗状況を書いておこうと思います。
・その花は強くて優しかった 次の試合の途中まで大まかに書いてはいるんですけど、試合のシーンに納得がいかなくて答えを出せるまで寝かしている状況です。ただ物語のプロットは最後までおおまかに考えてあるし、人気シリーズの完結編なので優先して書きたいと思っている作品です。
・ときめき10カウント~あの時の約束 物語のクライマックスに突入したところで止めてしまったので早く最後まで書き上げたいと思っている作品です。少女漫画的世界観の物語を書きたいモードになった時にまた書けるのではないかと思います。これまではそうして書いてました。
・Love & fight 物語のプロットは大まかに出来てるのですけど、「ときめき10カウント~あの時の約束」と似ている作品なので、「ときめき10カウント~あの時の約束」の方を優先して書きたいと考えてます。ただみさおというキャラは動かしやすいのでこちらの作品を先に書くかもしれません。
・おさぼく2 この作品も物語のプロットは最後まで出来てるし、試合シーンのアイデアも出てるのですけど、物語にもう一味が足りてない感じがするので寝かしてます。遥花のイラストを描いてキャラのイメージをより「掴みやすくなれば筆が進むかなとも思ってます。
・君がリングに上がる 物語の方向性がいまいち定まらないので止めています。おさぼく2の元になった作品でもあるので先におさぼく2の方を書き上げてからになると思います。
「Valkyrie age」イラスト再々修正
2018/02/12 Mon 01:14
西暦2070年。
宇宙に浮遊するいくつものスペースコロニー。人類は宇宙に住む時代を迎えていた。人工の居住地を宇宙に飛ばすことに成功し人口増の問題を解決したのだ。
宇宙での生活が可能になった新時代。しかし、それは新たな問題を生み出した。
差別と搾取。
全ての決定権は地球にあり、万事に地球が優先された。
長年の不満が爆発したスペースコロニーの連合によるコスモスは地球に戦争を仕掛ける。
一年にわたった戦争は地球の勝利に終わり、コスモスと和平が結ばれた。
同じ過ちが繰り返されてはならない。
和平が結ばれた6月15日に地球とコスモスとでセレモニーが毎年開催されることになる。
地球にコスモスの要人を招き行われる親睦会。その中で最も注目を集めるのが地球とコスモスの代表が闘う女子によるボクシングの試合だった。
しかし、親睦とは名目にすぎず、人口数、資本力に勝る地球がボクシングの試合でコスモスに負けることはなく、地球の方が力が上であると知らしめるために行われているのが実情だった。
地球が勝ち続け9年。10年目となる今年は19歳の新鋭である軍人のユウ・アカシが地球を代表して試合に臨む。
またイラストに修正を加えました。何か所かに修正を入れてますけど、今回は主にグローブに変更を入れてます。前回も良いかなぁと思いつつもどこかしっくりとこないものがあったので。好みによるところが大きいとは思いますけど、ここは大事なところだなと思って(^^)
本日の更新
2018/02/11 Sun 21:37
こんばんば~、へいぞです。
「Valkyrie age」の物語の第一話を掲載しました。もっとざっくりとした文章にしようと思っていたんですけど、書いてみたら小説に近いものになりました。一応、小説という形で進めていこうかなと思ってます。キャラクターとかの名前は変えるかもしれません。スペースセイヴァーはコスモスに変えてます。
「Valkyrie age」の物語の第一話を掲載しました。もっとざっくりとした文章にしようと思っていたんですけど、書いてみたら小説に近いものになりました。一応、小説という形で進めていこうかなと思ってます。キャラクターとかの名前は変えるかもしれません。スペースセイヴァーはコスモスに変えてます。
「Valkyrie age」第一話
2018/02/11 Sun 21:25
高級なスーツを着た紳士や煌びやかなドレスを着飾った婦人たちの談笑がノイズのように響いている。
エリート階級たちの社交場。
あたしには場違いな場所だ。
やってられない。明日は試合だってのに。
「そうつまらない顔をするな」
斜め上から下りてきたエルマの声。
振り向くと隣に彼が腕を組むように立っていた。
陸軍の少佐であたしの上司兼ボクシングのトレーナーだ。
「御前はパーティーの主賓の一人なんだ。周りの目を集めていると思っておけ」
そう言ってエルマが続ける。
「笑顔でいろとまでは言わんがな」
ユウは組んでいた両腕をほどいた。
解いたのは腕だけ。
表情を変えるつもりはなかった。
この場にちょっとでも融け込むことが嫌なんだ。
あたしは戦士。そして、明日は大事な試合が控えているんだから。
「ところでコスモス側の選手は誰なんですか?」
「俺も分からん」
はあっと息が出た。試合相手の選手が分かると思って我慢して来たのに。
「いずれ分かるだろう。パーティーの中で試合に出るファイターは必ず紹介されるからな」
「そうですか」
こんなところでパーティーの余興みたいに大々的に紹介されても。
動物園にいる猿じゃないんだから。
エルマが前へと出る。
「どこに行くんですか?」
「挨拶しておかんといかん人間がたくさんいるんでな」
振り返らずに答えるエルマがテーブルの上を指差す。
「くれぐれもここに出てる飯は食べるなよ」
普段から低い声が一段と低くなった、
「どんな手を使って毒を盛ってくるか分からんからな」
そう言い残して離れていくエルマの背中を見ながら分かってますとユウは小さく呟いた。
明日の試合は長年追い求めていたもの。
明日の試合に勝てば父の情報を手に入れる可能性が格段と上がるかもしれない。
四十年前に人類は宇宙に住む時代を迎えた。人口増の問題を解決するために人工の居住地スペースコロニーを開発して宇宙に飛ばしたのだ。徐々にスペースコロニーに移住する人は増え今では地球の人口の五分の一が生活し、スペースコロニーの数も七つになっている。
でも、スペースコロニーは宇宙で生活していても地球の一部であって、彼らは遥か遠くに住む地球人。その構図が差別と搾取をもたらした。
地球側にすべての決定権があり地球が何事においても優先という構図に不満を蓄積させたスペースコロニー側は、すべてのコロニー間でコスモスという同盟を組み、地球に戦争を仕掛けた。一年に渡ったその戦争は地球側の勝利で終わり、スペースコロニーとで和平が結ばれた。それでも、今も地球による差別と搾取は続いている。戦争が終わり和平が結ばれても何も変わらないのだ。
多くのものを失っただけ。大切なものを失っただけ。
あたしの父はその戦争で亡くなった。
あたしの家に爆弾が落とされた。
一人家にいた父。助かるはずがなかった。
爆発した家の中で見つかった父の死体には銃弾の跡が胸にあった。
軍人でなく宇宙学の学者であった父が戦争で銃殺された。それは戦争に巻き込まれたのではなくて計画的な犯行だった。父の友人である宇宙学の学者のエマーソンはそう母に説明していた。幼かったあたしは部屋の外から偶然に聞いてしまった。
父はなぜ殺されたのか。
誰に殺されたのか。
あたしは真実を知りたくて決意した。
軍人になる。そして、コスモス側とで毎年終戦日から三日間開かれる平和の祭典「エターナルピース」のメインとなるイベント、女子同士のボクシングの試合に出て勝つ。試合に勝った地球側の選手は全員が軍人で皆軍の幹部に昇格している。ボクシングの試合でコスモスの選手に勝つことは至上命令。戦争に勝った地球がコスモスに負けることは絶対にあってならないこと。その命令通りにこれまでの九年間は地球のファイターが勝ち続けてきている。軍に入隊して二年目で掴んだ大舞台での活躍の場。幹部になれば戦争で起きたことを知る機会が一気に増える。
そのために十二歳からボクシングを始めた。ボクシングは好きになったしジムの仲間と一緒に練習する日々は楽しかった。そのままジムに残って世界チャンピオンを目指したい思いもあったけれど、父の死の真相を知りたい思いを捨てきれなくて軍人になった。
軍に入隊してからはジムの仲間と会うことはなくなった。いいやつばかりだったけど・・・。特に仲が良かったのはキララ。あたしと同じ年の彼女は同じ時期にボクシングのジムに入会してきた。強くなりたいという理由で。
口の悪いあたしの愚痴に彼女は嫌な顔をしないで聞いてくれた。
分かるよ、ユウちゃんの気持ち。
彼女はよくそう言って頷いてくれた。
彼女にそう言ってもらえるだけでギスギスしたあたしの心は和らいだ。でも、彼女とだけはもう二度会うことはない・・・。
十五歳の時、キララはスペースコロニーに移住してしまったのだ。
もう会うことはなくても、明日の試合はスペースコロニーでも放送されるみたいだから、あたしの元気な姿だけでも見せられたら良いかな。
ユウちゃんはすごいなぁ。
練習の時によく言っていた言葉をもう一度言うかも。
「ユウちゃん」
キララの声がユウの名前を呼ぶ。
幻聴?
じゃない。はっきりとしたリアルな声。
我に返って、顔を上げる。
ワンピースの水着にコスモスのマークがついた軍服のジャケットを着た姿。
彼女はユウの目の前にいた。
エリート階級たちの社交場。
あたしには場違いな場所だ。
やってられない。明日は試合だってのに。
「そうつまらない顔をするな」
斜め上から下りてきたエルマの声。
振り向くと隣に彼が腕を組むように立っていた。
陸軍の少佐であたしの上司兼ボクシングのトレーナーだ。
「御前はパーティーの主賓の一人なんだ。周りの目を集めていると思っておけ」
そう言ってエルマが続ける。
「笑顔でいろとまでは言わんがな」
ユウは組んでいた両腕をほどいた。
解いたのは腕だけ。
表情を変えるつもりはなかった。
この場にちょっとでも融け込むことが嫌なんだ。
あたしは戦士。そして、明日は大事な試合が控えているんだから。
「ところでコスモス側の選手は誰なんですか?」
「俺も分からん」
はあっと息が出た。試合相手の選手が分かると思って我慢して来たのに。
「いずれ分かるだろう。パーティーの中で試合に出るファイターは必ず紹介されるからな」
「そうですか」
こんなところでパーティーの余興みたいに大々的に紹介されても。
動物園にいる猿じゃないんだから。
エルマが前へと出る。
「どこに行くんですか?」
「挨拶しておかんといかん人間がたくさんいるんでな」
振り返らずに答えるエルマがテーブルの上を指差す。
「くれぐれもここに出てる飯は食べるなよ」
普段から低い声が一段と低くなった、
「どんな手を使って毒を盛ってくるか分からんからな」
そう言い残して離れていくエルマの背中を見ながら分かってますとユウは小さく呟いた。
明日の試合は長年追い求めていたもの。
明日の試合に勝てば父の情報を手に入れる可能性が格段と上がるかもしれない。
四十年前に人類は宇宙に住む時代を迎えた。人口増の問題を解決するために人工の居住地スペースコロニーを開発して宇宙に飛ばしたのだ。徐々にスペースコロニーに移住する人は増え今では地球の人口の五分の一が生活し、スペースコロニーの数も七つになっている。
でも、スペースコロニーは宇宙で生活していても地球の一部であって、彼らは遥か遠くに住む地球人。その構図が差別と搾取をもたらした。
地球側にすべての決定権があり地球が何事においても優先という構図に不満を蓄積させたスペースコロニー側は、すべてのコロニー間でコスモスという同盟を組み、地球に戦争を仕掛けた。一年に渡ったその戦争は地球側の勝利で終わり、スペースコロニーとで和平が結ばれた。それでも、今も地球による差別と搾取は続いている。戦争が終わり和平が結ばれても何も変わらないのだ。
多くのものを失っただけ。大切なものを失っただけ。
あたしの父はその戦争で亡くなった。
あたしの家に爆弾が落とされた。
一人家にいた父。助かるはずがなかった。
爆発した家の中で見つかった父の死体には銃弾の跡が胸にあった。
軍人でなく宇宙学の学者であった父が戦争で銃殺された。それは戦争に巻き込まれたのではなくて計画的な犯行だった。父の友人である宇宙学の学者のエマーソンはそう母に説明していた。幼かったあたしは部屋の外から偶然に聞いてしまった。
父はなぜ殺されたのか。
誰に殺されたのか。
あたしは真実を知りたくて決意した。
軍人になる。そして、コスモス側とで毎年終戦日から三日間開かれる平和の祭典「エターナルピース」のメインとなるイベント、女子同士のボクシングの試合に出て勝つ。試合に勝った地球側の選手は全員が軍人で皆軍の幹部に昇格している。ボクシングの試合でコスモスの選手に勝つことは至上命令。戦争に勝った地球がコスモスに負けることは絶対にあってならないこと。その命令通りにこれまでの九年間は地球のファイターが勝ち続けてきている。軍に入隊して二年目で掴んだ大舞台での活躍の場。幹部になれば戦争で起きたことを知る機会が一気に増える。
そのために十二歳からボクシングを始めた。ボクシングは好きになったしジムの仲間と一緒に練習する日々は楽しかった。そのままジムに残って世界チャンピオンを目指したい思いもあったけれど、父の死の真相を知りたい思いを捨てきれなくて軍人になった。
軍に入隊してからはジムの仲間と会うことはなくなった。いいやつばかりだったけど・・・。特に仲が良かったのはキララ。あたしと同じ年の彼女は同じ時期にボクシングのジムに入会してきた。強くなりたいという理由で。
口の悪いあたしの愚痴に彼女は嫌な顔をしないで聞いてくれた。
分かるよ、ユウちゃんの気持ち。
彼女はよくそう言って頷いてくれた。
彼女にそう言ってもらえるだけでギスギスしたあたしの心は和らいだ。でも、彼女とだけはもう二度会うことはない・・・。
十五歳の時、キララはスペースコロニーに移住してしまったのだ。
もう会うことはなくても、明日の試合はスペースコロニーでも放送されるみたいだから、あたしの元気な姿だけでも見せられたら良いかな。
ユウちゃんはすごいなぁ。
練習の時によく言っていた言葉をもう一度言うかも。
「ユウちゃん」
キララの声がユウの名前を呼ぶ。
幻聴?
じゃない。はっきりとしたリアルな声。
我に返って、顔を上げる。
ワンピースの水着にコスモスのマークがついた軍服のジャケットを着た姿。
彼女はユウの目の前にいた。
本日の更新
2018/02/10 Sat 23:13
こんばんば~、へいぞです。
昨日アップした「Valkrie age」のイラストを修正したので再アップしました。どう変わったか比較してみるのも楽しいかなと思って前回アップしたものはそのまま残してます。
物語の方はだいぶ頭の中で出来上がってきてるのでなんらかの形でアップ出来たら良いなと考えてます(^^)
昨日アップした「Valkrie age」のイラストを修正したので再アップしました。どう変わったか比較してみるのも楽しいかなと思って前回アップしたものはそのまま残してます。
物語の方はだいぶ頭の中で出来上がってきてるのでなんらかの形でアップ出来たら良いなと考えてます(^^)