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こんばんわ~へいぞです。

Pinky boxyをブログからホームページに変えてそれに伴い、サイトのアドレスが変更しました。

これからは↓のアドレスで更新します。ブックマークの変更等よろしくお願いします(^^)

https://heizo2019.jimdofree.com/

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今日の更新

2018/06/07 Thu 20:31

こんばんわ~へいぞです。

「ときめき10カウント~あの時の約束」の連載を再開しました。この作品を書きたいモードになったのでなんとか完結までいけたらと思います(^^)
未分類 | コメント(0)
 減量をする必要はあまりないけれどひたすら走った。毎日走り続けた。一日に20キロは走っている。前回、由香理との試合で後半のRにスタミナ切れを起こしたことを反省して下半身を一から作り直している。技術では由香里に敵わないけれど、スタミナでは負けたくなかった。階級を上げても減量に苦しんでいる由香理に努力をすればスタミナでは優位に立てるはずだから。
 それに頭の中を真っ白にしたかった。今回の由香理との再戦もタイトルマッチ。勝てば日本チャンピオンになれるのだと思うとどうしてもあの時の約束が思い浮かばってしまう。二人とも日本チャンピオンになったら告白の返事を高野からもらえる。
 でも、みちるは試合に勝っても高野から返事をもらいたいとは思わなかった。ボクシングに専念しなきゃチャンピオンになれっこない。そんな甘い世界じゃないことは前回の由香理との試合で痛感した。
 でも気を許すと、告白の返事をもらいたい誘惑に駆られてしまう。そんな邪念が出る自分が嫌でみちるは時間があれば走っていた。
 もう一時間は走ったかな……。みちるは汗をアスファルトに滴らせ落としながら土手を走り続ける。練習のメニューを一通り終えて最後にロードワークに出た。タイトルマッチまであと三週間を切った。毎日のハードな練習で疲労はピークに達している。二時間の練習の後の一時間以上にわたるロードワーク。もう足を止めたいと何度も思うけれど、それじゃ前と変わらない。試合の途中で足が止まっちゃう。辛い思いを乗り越えて練習をしなきゃ。絶対に由香理に勝つんだから。
 みちるは心が折れそうになるたびに自分の心を鼓舞させて走り続けた。ジムまで戻り、入り口の扉を開けた。
 季節は七月に入り外は夜でも蒸し暑かったけれど、ジムの中はそれ以上に熱い。むわっとする熱気が顔にかかり、みちるは頭がくらっとして立ち眩みした。足がもつれ後ろに崩れ落ちる。地面に倒れそうな身体を受け止めてくれたのは高野だった。
 背中に腕を回して身体を抱えられ高野の顔が間近にある。
「大丈夫かみちる?」
 心配そうに聞かれみちるは頬を赤らめた。
「うん……」
 もっと喋りたかったけれどそう返事するので精一杯だ。高野に長椅子に寝かしてもらいおまけに水に濡らしたタオルまで額に当ててもらった。
「何かあれば俺に言えよ。俺、ジムにまだいるからさ」
 そう言って高野はトレーニングに戻っていった。
 身体はまだ重たくてみちるは目を瞑ったまま天井に顔を向けていた。水に濡らしたタオルの冷気が疲労困憊の身体に染みわたり気持ち良い。そして、何よりも高野の優しさが心を温かくする。
 高野……ダメだよ。そんな優しくされたらあたし自分の思い抱えたままじゃいられないよ……。

 翌日もみちるは夜にロードワークに出た。ジムを出る時、高野に大丈夫かと心配そうに声をかけられたけど、元気を笑顔で振りまいてみちるは出ていった。高野のケアのおかげで身体はすっかり元気になっていた。疲労はまだ残っているけれど、気持ちが疲れを吹き飛ばしてくれている。
 足の筋を伸ばして、走ろうとしたところでみちるは足を止めた。思わぬ人物がジムに向かってきていた。彼女はみちるの前で足を止めて「お久しぶりね」と挨拶をする。
 みちるは思いがけない客人、由香理を前にして表情を硬くした。
「これからロードワーク? 練習の邪魔かしら?」
「別にいいけれど、どうしたのこんなところまで。あの時みたいに宣戦布告?」
 みちるは冗談めかして言った。
「そうね、あなたには試合前に言っておきたいことがあったから」
 由香理の真剣な表情にみちるも真顔に戻る。
「私、琢磨に思いを告げたわ。あなたとの試合が終わった後で返事をいただくことになってるの」
 由香理の告白にみちるは頭をがつんと殴られたような衝撃を受けた。
「あなたに言わなければならないわけでもないけれど、陰でこそこそとするのは性に合わないから一応伝えておいたわ」
「別に……高野と付き合うとかあたしには関係ないから」
 そう言ってみちるは続けた。
「恋愛とか今のあたしには関係ないから」
「そう……あなたは愛を分かってないのね」
 由香理の言葉にみちるはイラっとして睨み付けた。
「なによ、偉そうに上から目線で。浮ついた気持ちでボクシングなんか出来るわけないじゃん」
「だから愛を分かってないって言ってるのよ」
「知らないよ。あたしは由香理に勝つことにだけ集中してるんだから。もうそんなくだらない話いいでしょ」
 みちるは話を切り上げてロードワークに出た。
 なによ馬鹿にして。愛が分かってないって何様のつもりよ。絶対に負けられないよ。由香理には絶対に負けられない。
 みちるは人気のない夜の土手を走り続けた。頭の中のもやもやを吹き飛ばしたくて。でも、とれない。由香理が高野に告白した。その事実が頭の中をぐるぐると周り続ける。
 一週間が経っても胸のもやもやはとれずにいた。練習に集中できずにいる。ダメだ、このままじゃダメだ。でも分かってても頭の中がぐちゃぐちゃしててどうにもならない。
 ゴングの音が鳴ってスパーリングが終わった。一発のパンチも当てられないどころかリズムががたがたで酷いボクシングだった。
 高野がヘッドギアを取ってみちるを見る。
 何か言いたげそうな目。そうだよね、せっかく毎日スパーリングに付き合ってもらってるのに。由香理との試合対策で右と左にスイッチまでしてもらって。なのにあたしはお粗末なボクシングをして……。
「みちる、まだ体の具合が悪いんじゃないのか?」
「そんなことないよ……」
「だってもう試合まで二週間切ってるんだぜ。こんな調子じゃ……」
「分かってる」
 分かってるけど――――。
「何かあったのか?」
 みちるは黙ったままでいた。
「そうなのか?」
 高野、あたしに気を使わないで。優しくされたらあたし……。
「俺でよければ話聞くよ。大事な試合が控えてるんだ。何かあるならすっきりした方がいいだろ」
「高野には関係ない」
 みちるはリングから下りて逃げるように練習場から出ていった。更衣室に入った途端、膝をついて堰を切ったように泣きじゃくった。
 もうどうすればいいか分からない。つらい、ものすごくつらい。高野への思いを抱えたままでいるのがすごくつらい。でも、言えない。高野に返事を欲しいなんて言えない。
 ドアをノックする音がした。
「みちる、開けていいか?」
 高野の声だ。
「ダメ、絶対開けないで」
 どうしよう、高野が来ちゃった。こんな姿見せられないよ。みちるは慌てて涙を拭う。
「着替えてるのか?」
「そうじゃないけど……」
 そう言った途端、ドアが開けられた。
 みちるは涙が零れ落ちる顔で高野と目が合った。すぐに顔を反らしてまた涙を拭う。
 見られちゃった。こんな情けない姿高野に見られちゃった……。
「悪い……。心配だったから……」
 高野が罰の悪そうに言った。何度目元を拭っても涙は止まらない。溢れ出てくる。
「あたし、日本チャンピオンになっても高野から告白の返事をもらわないようにしようと思ってた。浮ついた気持ちでボクシングはもうしたくなかったから」
 涙で高野の顔がよく分からない。それでも、続けた。溢れ出る思いを大声で出した。
「でも、やっぱり聞きたい。高野の気持ちを。試合に勝ったら高野の気持ちを聞きたいよ!!」
 何言ってるんだろうあたし……。急にこんなこと言われても困るよね……。
「逃げてるのは俺の方だ。ずっとみちるに悪いと思ってた。試合が終わったらみちるに俺の思い伝えるから……だから……」
 高野は、
「悔いの残らない試合しようぜ」
 そう言って右手を差し出した。
「高野……」
 みちるが右手を掴み立ち上がる。左手で涙を拭いて言った。
「うん、あたし最高の試合するから」
 みちるは笑顔でそう応えた。
 自分の思いに嘘つくのはもう止めにする。あたし、ボクシングも高野もどっちも大好きだから。
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