「あに―いもうと」第5話
2017/04/16 Sun 09:54
デンプシーロールが破られた…
カウントが8を数え上げられたところで立ち上がった亜衣はロープに寄りかかり目がとろんとし弱々しい表情で天を仰ぐ。自分が拠りどころにしていた技を打ち破られて呆然自失していた。得意の技が美羽に通用しなかった失望感とこの先どう闘えばいいのか分からない絶望感が広がっていて気持ちがどうにもならなくなっている。それでも立ち上がれたのは、タクロウの前でノックアウトされてキャンバスに倒れている姿を見せたくない意地からだった。
レフェリーの問いかけに亜衣は頷き試合が再開された。
負けられない…とにかくこのRを逃げきらなきゃ…。
美羽がダッシュして距離を詰めラッシュを仕掛けてきた。美羽のパンチの猛攻に亜衣は両腕を頭の位置まで上げて徹底したガードで凌ごうとする。
少しでも気を許したらガードが弾かれそうな強烈なパンチの連打。このままじゃガードがもたない。亜衣は一か八かで前に出て美羽の背中に両腕を回して抱きついた。クリンチに成功して、荒い息を吐きながら美羽に体を預けた。クリンチをほどかれないように両腕に精一杯力を入れる。
さっきまで揶揄していた美羽の逃げ腰の闘い方を今は自分がしている。みっともないと思いながらも亜衣はなりふりかまっていられなかった。この場をなんとかしなきゃ…。
「ブレイク!」
レフェリーが割って入り、身体を美羽から離された。
再び出来た距離を美羽はすぐにダッシュして亜衣にパンチの連打を畳みかけていく。亜衣はガードで凌ぐものの、ロープまで追いやられて、美羽のパンチの圧力をもろに受けるようになった。ガードする両腕が次第に麻痺していき、肘より先がなくなってしまったんじゃないかというような異様な感覚に陥る。
これ以上はまずい…。
亜衣は腰を沈めて自分からその場に尻もちをついた。
レフェリーがダウンを宣告する。亜衣の不自然な倒れ方に観客席からブーイングが飛んだ。
「汚ねぇぞ!!」
「正々堂々と闘え!!」
観客から野次まで受けて、亜衣は尻もちをついた体勢で悔しさを噛み締めながら、カウントいっぱいまで休むんだと自分に言い聞かした。
亜衣はカウント8を数えられたところで立ち上がりファイティングポーズを取った。少しの時間休めたもののそれでもまだ体がダメージで思うように動けそうになかった。
なんとかしなきゃ…。
その場に立ったまま動けずにいる亜衣の元へまた美羽がダッシュして距離を詰めにきた。亜衣はとっさに両腕を上げてガードをとる。結局のところ、やれることはガードで凌ぐくらいしかなかった。
それでもここを凌ぎきれば…。そう願う亜衣のお腹に強烈な衝撃が走る。美羽のアッパーカットがお腹に突き刺さり、亜衣の体がくの字に折れ曲がる。
「がはぁっ!!」
亜衣の口から苦悶の声が漏れた。
膝が折れ曲がり美羽のへその位置まで下がった亜衣の顔面にさらにパンチが襲いかかる。美羽の右のアッパーカット。パンチのダメージで目が上を向いている亜衣にそのパンチはまったく見えていなかった。
カーン!!
第2R終了のゴングが鳴った。
亜衣の顎の手前で美羽のパンチは止まっていた。目の焦点が定まらずに呆然とした表情で固まっている亜衣の顔から美羽が右拳を引き、一人先に赤コーナーへと戻っていく。
ややあって、遠ざかっていく美羽の背中を認識した亜衣も重い足取りで青コーナーへ戻った。
カウントが8を数え上げられたところで立ち上がった亜衣はロープに寄りかかり目がとろんとし弱々しい表情で天を仰ぐ。自分が拠りどころにしていた技を打ち破られて呆然自失していた。得意の技が美羽に通用しなかった失望感とこの先どう闘えばいいのか分からない絶望感が広がっていて気持ちがどうにもならなくなっている。それでも立ち上がれたのは、タクロウの前でノックアウトされてキャンバスに倒れている姿を見せたくない意地からだった。
レフェリーの問いかけに亜衣は頷き試合が再開された。
負けられない…とにかくこのRを逃げきらなきゃ…。
美羽がダッシュして距離を詰めラッシュを仕掛けてきた。美羽のパンチの猛攻に亜衣は両腕を頭の位置まで上げて徹底したガードで凌ごうとする。
少しでも気を許したらガードが弾かれそうな強烈なパンチの連打。このままじゃガードがもたない。亜衣は一か八かで前に出て美羽の背中に両腕を回して抱きついた。クリンチに成功して、荒い息を吐きながら美羽に体を預けた。クリンチをほどかれないように両腕に精一杯力を入れる。
さっきまで揶揄していた美羽の逃げ腰の闘い方を今は自分がしている。みっともないと思いながらも亜衣はなりふりかまっていられなかった。この場をなんとかしなきゃ…。
「ブレイク!」
レフェリーが割って入り、身体を美羽から離された。
再び出来た距離を美羽はすぐにダッシュして亜衣にパンチの連打を畳みかけていく。亜衣はガードで凌ぐものの、ロープまで追いやられて、美羽のパンチの圧力をもろに受けるようになった。ガードする両腕が次第に麻痺していき、肘より先がなくなってしまったんじゃないかというような異様な感覚に陥る。
これ以上はまずい…。
亜衣は腰を沈めて自分からその場に尻もちをついた。
レフェリーがダウンを宣告する。亜衣の不自然な倒れ方に観客席からブーイングが飛んだ。
「汚ねぇぞ!!」
「正々堂々と闘え!!」
観客から野次まで受けて、亜衣は尻もちをついた体勢で悔しさを噛み締めながら、カウントいっぱいまで休むんだと自分に言い聞かした。
亜衣はカウント8を数えられたところで立ち上がりファイティングポーズを取った。少しの時間休めたもののそれでもまだ体がダメージで思うように動けそうになかった。
なんとかしなきゃ…。
その場に立ったまま動けずにいる亜衣の元へまた美羽がダッシュして距離を詰めにきた。亜衣はとっさに両腕を上げてガードをとる。結局のところ、やれることはガードで凌ぐくらいしかなかった。
それでもここを凌ぎきれば…。そう願う亜衣のお腹に強烈な衝撃が走る。美羽のアッパーカットがお腹に突き刺さり、亜衣の体がくの字に折れ曲がる。
「がはぁっ!!」
亜衣の口から苦悶の声が漏れた。
膝が折れ曲がり美羽のへその位置まで下がった亜衣の顔面にさらにパンチが襲いかかる。美羽の右のアッパーカット。パンチのダメージで目が上を向いている亜衣にそのパンチはまったく見えていなかった。
カーン!!
第2R終了のゴングが鳴った。
亜衣の顎の手前で美羽のパンチは止まっていた。目の焦点が定まらずに呆然とした表情で固まっている亜衣の顔から美羽が右拳を引き、一人先に赤コーナーへと戻っていく。
ややあって、遠ざかっていく美羽の背中を認識した亜衣も重い足取りで青コーナーへ戻った。
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